合格者の受験番号が掲示される朝9時前から3機の電話を握りしめて塾で待っていた。
この1週間、作業や思考がふと止まると猛烈な吐き気に襲われていた。
公開された入試問題を何度も解きながら、これは取れているはずだとか、ここは落としただろうなとか、皆が何点取れているかをシミュレートしていた。
今朝も缶コーヒーを持つ手は震えていたが、やっと結果を知ることができる安堵感もあった。
9時半頃から順々に連絡が入り、心配していた内申点が低かった生徒からも、推薦で落ちた生徒からも、順調に合格の連絡が入った。
発表を見に行った帰りに立ち寄ってくれて、嬉しさを噛み締め余韻に浸っていたり、まだ実感は湧いていないが興奮していたり、急に実感が湧いて泣き出したりする生徒達を見ながら合格の喜びを一緒に味わわせてもらっていた。
そんな中、1件の電話と1件のメールが入った。
どちらも保護者からであったので、ああ落ちたんだなと直感した。
自律が間に合わなかったと感じていた2人だった。
一番付き合いの長い2人だった。
1人は夕方、元気を振り絞って来てくれた。
今日までの奮闘を労い足りなかったことを振り返り、僕の考えを伝え次に繋げようという話をした。
綺麗事を言うなと思っていたかも知れないし何も伝わっていないかも知れないが、今回は不合格を経験すること、私立の高校に進学することが、今後の人生において今最も必要な経験であり、最善の進路であるという考えは変わらない。だから塾であるのに合格は請け負わないと公言している。
冒頭の話と矛盾しているが、それはやはり生徒の喜ぶ姿だけが見たいというエゴは僕にもある。
もう1人は今日は来なかった。
どういった心境であれ、自分で報告をしてほしい。
泣いていようが落ち込んでいようがそうしてほしい。
もうしばらく待っていよう。
皆、本当にお疲れ様。
Keita